キャラクターの権利保護
クリエーターは大ヒットしたキャラクターをどう守っていくべきか?
ロッテのチョコレート菓子、ビックリマンチョコの「悪魔VS天使シール」の大ヒットから既に30年以上が経過しました。人気に火がつくと、アニメ化、ゲーム化されました。また、ビックリマンチョコを購入した子供がお目当てのシールだけを抜き出し、中身のお菓子を捨てるといったことが社会問題にもなりました。 希少価値の高いキャラクターのシールは、今なお高値で取引されています。その中でも極めて人気が高かったヘッドロココというキャラクターについて、クリエーター(作者)の目線で留意すべき権利を見ていきましょう。

(特許情報プラットフォームより)
このヘッドロココが登場する「悪魔VS天使シール」はビックリマンチョコのシリーズの一つですが、それまでのシールと違って悪魔と天使の争いという物語性を備えたものでした(下左が天聖界を治めるスーパーゼウス、下右が天魔界を治めるスーパーデビル)。

(特許情報プラットフォームより)

(特許情報プラットフォームより)
スーパーゼウスの命を受け、聖フェニックスが仲間とともに新天地(次界)を目指すというストーリー。各キャラクターは物語とともに姿や能力を進化させていきます(下図はそれぞれ進化の一形態)。


こうした人気キャラクターについて、誰がどのような権利を持つことになるのでしょうか?
- 著作権
- 商標権
- 著作権と商標権の違い
1.著作権
著作権という権利は自動的に発生する
キャラクターデザインが出来上がった瞬間に、作者に著作権という権利が自動的に発生します。ヘッドロココのデザインが完成した時点では、作者に(ヘッドロココのデザインに関する)著作権が生じるということになります。
著作権には様々な権利がある
著作権には様々な権利があるのですが、例えば、勝手にヘッドロココというキャラクターデザインを加工、修正されない、という権利があります(同一性保持権)。また、ヘッドロココのデザインを複製する(コピー機で印刷したり、電子データをコピーペーストしたりする)権利(複製権)などもあります。
著作権は具体的な表現物に発生する
著作権はキャラクターという抽象的なものに発生するのではなく、デザインという具体的な表現物について発生するものです。従って、ヘッドロココと聖フェニックスが同一人物だというキャラクター設定は関係なく、ヘッドロココと聖フェニックスのそれぞれに著作権が発生します。
権利の帰属
仮に、企業の従業員が職務上作成した場合、著作権は企業のものになることがあります(著作権法第15条に規定、本記事では詳細については割愛)。
企業の従業員としてではなく、企業から依頼を受けて作った場合は、作者に著作権があります。ただ、それでは買い取ったデザインを企業が自由に使うことができないので、契約を結び、著作権を譲り受けたりするのです。
2.商標権
商標は商品に付ける目印
ヘッドロココをはじめ、多くのビックリマンキャラクターは、ロッテによって商標登録されています。
商標とは、簡単に言うと、商品に付ける目印です。「TOYOTA」や「SONY」などの会社名、「LEXUS」や「WALKMAN」などの商品名は、それを見た需要者がどこの商品なのか識別できるものです。
商標とはそのような識別機能を持つものです。特許庁に出願申請して、審査官から識別機能を有するものだと認められたら登録されます。


(特許情報プラットフォームより)


商標登録されると、他人は勝手に使用できない
ヘッドロココのデザインは「おもちゃ」や「人形」などの商品を対象に、株式会社ロッテによって権利が取られています。この場合、ロッテ以外の他の企業が「おもちゃ」や「人形」に、このヘッドロココのデザインをつけて販売したら商標権侵害になります。ヘッドロココの登録商標に似たものでもだめです。
3.著作権と商標権の違い
著作権と商標権の保護対象
ヘッドロココのデザインそのものを保護するのが著作権です。これに対し、商標権はヘッドロココのデザインを商品やサービスと紐づいた目印として保護し、商標使用者である企業の信用と購入者の利益を保護するものです。
例えば、偽物のヘッドロココが付されたおもちゃを取り締まれないことになると、模倣品が横行し、正規品を販売する企業と購入者の利益が共に失われます。こうした模倣行為を禁止するのが商標権の役割です。
著作権は表現物について発生し、商標権は自分と他者を区別できるものに発生する
著作権は表現物について発生します。小説や映画などは表現物ですから著作権が発生します。これに対して、商標権は自分と他者を区別できるもの、例えば、会社名、商品名、ロゴマークなどに発生します。
著作権しか発生しない場合、商標権しか発生しない場合、著作権と商標権の両方発生する場合に分けられます。ヘッドロココのデザインは著作権と商標権の両方を兼ねることができるものだと言えます(下図:あくまでイメージ。図の通りでない場合もあります)。このように、時として境界が曖昧になることもあります。

著作権が発生するようなものについて、別途、商標権で保護することも場合によっては可能です。著作権法と商標法ではそもそもの法の目的が違いますので、権利武装のため著作権と商標権を重ね掛けもできます。ヘッドロココのキャラクターデザインは著作物であると同時に商標としても認められた例です。