2018-04-02

キャラクターに関わる権利

商品化権

Q.提供したキャラクターが第三者によって商品化される時、作者としてどんな権利が主張できるか知りたいです。キャラクターの作者はどんな権利を取得できますか? 

A.キャラクターの商品化に関わる権利としては「商品化権」という言葉で表現されることがあります。 

Q.商品化権はどのようにして取得できるのですか? 

A.法的に商品化権というものはありません。商品化権とは、キャラクター保護に関わる様々な権利をもとに総称的に使われている言葉です。

Q.商品化権を構成し得る具体的な法律にはどのようなものがあるのですか? 

A.表現物を保護する「著作権法」、商品やサービスの目印を保護する「商標法」、商品デザインを保護する「意匠法」、事業者間の公正な競争を確保するための「不正競争防止法」、などが挙げられます。※ 
※この他にパブリシティ権、肖像権などの権利が関係してくる場合も考えられますが、ここでは割愛します。

表現物を保護する著作権

Q.著作権とは? 

A.著作権は表現物を創作したときに発生する権利です。例えば、オリジナルキャラクターのイラストを描いたとしましょう。そのイラストは具体的な表現物ですので、著作権法で(作った瞬間に、登録する必要もなく自動的に)保護されます。 

Q.似たようなイラストが存在していたとしても大丈夫ですか? 

A.著作権法では似ているどうかや先後関係は問題ではありません。ポイントは独自に作ったかどうかです。ですので、類似するイラストであっても、それが独自に作られたものであるなら、それぞれに著作権が成立することになります。まあ、あまりにも似ていたら当然疑われるでしょうけど。

商品やサービスの目印を保護する商標権

Q.商標権とは? 

A.商標権は一般的に企業名や商品名など「目印」となり得るものについて成立する権利です。その商品と関係のない第三者が、勝手にその商品を作った企業であるかのような表示をしたり、模倣品にその商品名を表示したりするのを防ぐのが商標権です。キャラクターデザインやキャラクター名は「目印」にもなり得るので商標権を取得することもできます。 

Q.著作権との違いは何ですか?法律の条文が示す抽象的な違いではなく、わかりやすい違いを教えてください。 

A.先の話(著作権は類似していても独自に作ったものならば併存)の続きで説明すると、商標は目印の役割を果たすものなので、需要者が混同するような商標は認められません。つまり似ているキャラクターデザインやキャラクター名が商標登録されている場合、いくら独自に作ったものであっても、その登録商標に係る商品やサービスについて、自分のキャラクターデザインやキャラクター名を使うことができないということになります。 

Q.商標権は似たものが存在しない、唯一無二の権利ということでしょうか? 

A.商標登録(特許庁への商標登録出願手続き)にあたっては、その商標(キャラクターデザインやキャラクター名)を付す商品やサービスを指定する必要があります(指定商品、指定役務と言います)。この指定した商品やサービスをベースに商標権が認められます。 

Q.指定した商品やサービスをベースに商標権が認められるとは、どういう意味ですか? 

A.例えば“ひこにゃん”という商標があります。指定されているのは「携帯電話用のストラップ」等です。この場合、赤の他人は携帯電話用のストラップや類似する商品に“ひこにゃん”という文字を付すことはできません。一方、携帯電話用のストラップと全く異なる「ラーメンの提供」に用いても、この商標権を侵害することはありません。需要者が混同することはないですから、商標法ではこれでよし、ということになります。 

(登録番号:第5104693号)
(出典:特許情報プラットフォーム)

Q.どんな商品、サービスについても第三者の使用余地がなくなるよう、すべての商品、サービスを指定すれば良いのでは? 

A.指定する商品やサービスが増えるほど(正確には商品やサービスに対して便宜的に区分けされた“区分”が増えるほど)、かかる費用が増えていきます。また、商標を使用しない状態が続くと、不使用取消審判という審判において取消の対象になります。

商品デザインを保護する意匠権

Q.意匠権とは? 

A.意匠権は物品について発生する権利です。例えば、キャラクターの形をしたぬいぐるみやおもちゃ、キャラクターデザインを模様的に付した商品、といったように何らかの物品であることが必要です。 

(登録番号:第1563230号)
(物品:ぬいぐるみ)
(出典:特許情報プラットフォーム)
(登録番号:第1584606号)
(物品:おもちゃ)
(出典:特許情報プラットフォーム)

Q.著作権とはどこが違うのですか? 

A.著作権は表現そのもの(例えばキャラクターデザインそのもの)を対象にしているので、ぬいぐるみやおもちゃなどの物品とは無関係に成立するものです。意匠権は物品であることが成立の大前提です。また、著作権はキャラクターデザインを作った瞬間に自動的に発生しますが、意匠権の発生には特許庁への申請が前提となり、新規であるなどの要件をクリアしている必要があります。

事業者間の公正な競争を確保するための不正競争防止法

Q.不正競争防止法というのは? 

A.この法律では権利を取得するのに申請や登録は不要です。ですので、模倣商品対策の最後のよりどころ的なものだと言えます。例えば、キャラクターデザインが自社のものとして有名になっていた場合、似たようなキャラクターを付して需要者の混同を生じさせるような紛らわしい商品は、不正競争防止法の第2条1項1号に該当し、差止や刑事罰などの対象になります。

知財ミックス

Q.著作権、商標権、意匠権、不正競争防止法は、どの権利が良いのですか? 

A.状況にもよるので一概には言えません。また、どれか一つというわけでなく、状況を踏まえて複数の権利で厚く保護する「知財ミックス」という考え方があります。それぞれの権利・法律を簡単な比較表でまとめましたので参考にしてください。 

著作権

保護対象キャラクターデザインなどの表現物
取得方法作った瞬間に自動発生
権利期間作者の死後50年
メリット、デメリット権利取得が容易な反面、偶然似ている他人のものも権利成立

商標権

保護対象キャラクターデザイン、キャラクター名など商品やサービスの目印になるもの
取得方法特許庁に申請し、認めらえること
権利期間登録から10年(更新可能なので無期限化できる)
メリット、デメリット模倣を排除できる強い権利であるが、アングルが違うなど、キャラクターデザインが非類似であれば排除できない

意匠権

保護対象キャラクターの形をした物品、キャラクターを模様的に付した物品など
取得方法特許庁に申請し、認めらえること
権利期間登録から20年
メリット、デメリット模倣を排除できる強い権利であるが、商品販売前(公知になる前)に権利化手続きが必要になるなど事後的対応ができない

不正競争防止法

保護対象不正競争行為として規定されている不正競争行為を排除
行使要件周知性があるなど一定の要件を満たしていること
権利期間無期限(要件を満たしている限り)
メリット、デメリット登録不要で無期限保護可能だが、要件(周知であるなど)のハードルが高い
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