商品化の留意点(その2)
キャラクターを利用したい企業の留意点(その2)
前回、キャラクターを扱った商品やサービスを検討する際の留意点について紹介しました。<キャラクターを利用したい企業の留意点(その1)>
今回は、特に人気キャラクターを利用する場合の留意点について整理してみます。人気キャラクターの場合、そのイメージを維持するため、使用範囲や使用態様などに制約がつくことが珍しくありません。商品化したいと思っても、商品ジャンルによっては商品化できない、自社商品のイメージに合わせた作りかえができない、といったケースもでてきます。
日・米の人気キャラクターの代表的な例


(特許情報プラットフォームより)
上の例に見られるように、「ハローキティ」や「ミッキーマウス」は、文字・図柄・それらの組み合わせについて商標権だけでも数多く取得されています。商標権以外にも著作権、意匠権、不正競争防止法に基づく権利などがキャラクター商品化使用許諾契約の根拠になります。
キャラクター商品化使用許諾契約の例
使用許諾契約において、以下のような契約書を想定します。
(使用権の許諾)
第1条 甲(相手企業=ライセンサー)は乙(自社=ライセンシー)に対して、甲がその著作権その他の知的財産権を有するキャラクター及び名称を複製その他の方法によって使用して関東地域内においてTシャツを製造及び販売する権利を非独占的に許諾する。

使用許諾契約において気をつける事項
上の契約はキャラクターに関する権利を所有する甲が、キャラクターを利用したい乙に対して商品(Tシャツ)への使用を許可する内容になっています。 この契約において気をつけておきたい事項を挙げます。
- 対象となるキャラクター
- 許諾を得る権利(権利の内容、商品の範囲、地域)
- 独占性
- その他(権利侵害、契約期間)
1.対象となるキャラクター
文章だけで対象キャラクターを特定するのは困難ですので、別紙などでキャラクターを特定することになります。
2.許諾を得る権利
(1)「使用」に関する権利の内容
上の契約書では「複製その他の方法によって」使用することになっています。「複製」とは複写したり写真に撮ったりすることを意味します。対象となるキャラクターの絵柄をそのままプリントすることは「複製」して使用する行為であると考えることができます。
一方、キャラクターの表情や色使いを変更する場合は「複製」の許諾だけでは足りません。表情、色使い、その他の変更が「その他の方法によって」認められるのか、ライセンサーに確認しておく必要があります。

(2)使用範囲(商品の範囲)
上の契約において商品は「Tシャツ」となっていますので、取扱商品を帽子や靴に勝手に拡大することはできません。また、すでにTシャツについて独占的な契約を結んでいる第三者が存在する場合はそもそも契約できません。
(独占性については後述)
自社の商品カテゴリーが何であるのかということは重要です。自社がやろうとしている事業はTシャツの製造・販売として定義されるものなのか、そうではなく、Tシャツに限らずキャラクターを刺繍(ししゅう)加工する“ワッペン”という商品カテゴリーの方が適当なのか、よく検討すべきです。契約において自社の商品カテゴリーを「Tシャツ」とすることで、将来の事業展開が狭くなることもあります。

(3)使用範囲(地域)
上の契約において商品の製造行為、販売行為をできるのは「関東地域内」となっています。自社の製造場所や販売場所が海外や関東以外になる場合は契約違反になってしまいます。いまのビジネスは関東地域内だとしても、将来的には海外展開などもあるか、十分に検討すべきです。
3.独占性
上の契約においては、Tシャツを製造及び販売する権利を「非独占的」に許諾する、となっています。これは、自社の商品化後にそれを見た競合他社が、ライセンサーと同様の契約をする可能性があることを意味します。少なくとも取扱商品のカテゴリーにおいて独占使用を約束しておけば、そうしたリスクを排除することができます。
4.その他
(1)権利侵害
上の契約では触れていませんが、模倣品を発見した場合にどのように対処すべきか決めておく必要があります。非独占的に許諾する、というだけではライセンサーからキャラクターの使用を認められたということを意味するだけであり、模倣者に対して差止請求や損害賠償請求など実力行使することはできません。従って、模倣品を発見した場合はラインセンサーに通知し、ライセンシーが協力して侵害を排除するなどと明記しておくべきです。
(2)契約期間
契約期間が終了したらそのキャラクターを使えなくなります。従って、更新が可能かどうかは非常に重要です。また、契約の終了後に存在する在庫品の取扱いをどのようにするかも明記すべきです。