2018-05-25

人気キャラクターの作者の収入のしくみ

著作権は、作者によって創作された表現物(音楽、キャラクターデザインなど)を保護するための権利です。この著作権を根拠に作者の収入がどのように発生するのか、ヘッドロココなどビックリマンチョコで大ヒットしたキャラクターを例に取り上げます。 

ヘッドロココ(登録第5833916号) 
(特許情報プラットフォームより)

こうしたキャラクターの作者が通常、どのような収入を得ているのか、法的な面から整理します。 

企業勤務の場合 

職務的にキャラクターを創作する職種に就いている場合、 生み出した著作物の著作権はその法人(企業)が有することになります。 ※法人著作については記事下部をお読みください。 

著作権を法人が有するかぎりは、企業勤務者が創作の対価として報酬を受けることはできません。 著作権法では創作したキャラクターデザインに対する報酬を裏付ける規定は存在しません。 創作したキャラクターデザインが大ヒットしたからといって、企業にそれ相応の報酬を請求できる法的根拠もありません。 報酬がもらえるかどうかは、属する企業次第だと言えます。 

個人の場合 

個人の場合、取引先からの依頼で作成したキャラクターデザインであっても、その著作権は作者が有します。収入のあり方としては、その著作権を譲渡するのか、それとも権利を手元に置きつつライセンスするのかに分けることができます。

(1) 譲渡 

著作権というのは財産の一種ですから譲渡することができます(著作者人格権という人格的な権利は例外:著作者人格権に関する過去記事<著作者人格権の意味>参照)。 

ヘッドロココのキャラクターデザインについて見ると、これが譲渡されたものであるなら、作者は譲渡の対価を得る反面、譲渡後はそのキャラクターデザインを自由に使えなくなります。

譲渡にあたっての譲渡人と譲受人の間の具体的な行為としては、“著作権譲渡契約(書)”の締結を挙げることができます。 

(2) ライセンス 

キャラクターデザインに係る著作権を自由に使用できる状態を保ちつつ、希望する相手にキャラクターデザインを使わせることもできます。特定の相手に独占的にラインセスしたり、同時に多くの相手にラインセスしたりできます。 

ヘッドロココのキャラクターデザインについて見ると、これがラインセスによるものであるなら、契約内容によっては、作者はビックリマンチョコを販売する企業以外の第三者に、ヘッドロココのキャラクターデザインを使わせることもできます。 

ライセンスにあたってのライセンサーとライセンシーの間の具体的な行為としては、“著作物利用許諾契約(書)”や(キャラクター商品の作成が予定されている場合は)“商品化権許諾契約(書)”の締結を挙げることができます。 

著作権が制限される場合(作者収入にならない場合) 

著作権は、演奏権、複製権(コピー)、公衆送信権(インターネットでの配信)など複数の権利からなり、演奏する場合、コピーする場合、インターネットで送信する場合など、それぞれ対応する権利が作者収入の根拠になります。 

ただし、これらの権利が制限される場合があり、利用者が著作物を利用するあらゆる場合に作者収入が認められるわけではありません。 

例えば、公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ、その複製物の貸与を受ける者から料金を受けない場合には、その複製物の貸与により公衆に提供することができます。これは「営利を目的としない上演等」については著作権が制限されるという著作権法の規定(同法第38条)に基づくものです。 

このように著作権が制限される行為については、著作権法第30条(私的使用のための複製)~第47条の10(複製権の制限により作成された複製物の譲渡)に規定されています。 

(ご参考)法人著作の要件
(a) その著作物をつくる「企画」を立てるのが法人その他の「使用者」(例えば、国や会社など。以下「法人等」という)であること 
(b) 法人等の「業務に従事する者」が創作すること
(c) 「職務上」の行為として創作されること
(d) 「公表」する場合に「法人等の名義」で公表されるものであること
(e) 「契約や就業規則」に「職員を著作者とする」という定めがないこと(プログラムの著作物を除く)
 文化庁HP 法人著作の要件より(一部加筆)

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