2018-06-28

パロディってなに?

パロディってなに?何が問題なのか?

ビジネス分野や芸術分野においてパロディが原因でトラブルに発展することは珍しくありません。 
今回は、そもそもパロディとは?法的に問題があるのか?パロディに線引きはあるのか?など様々な疑問について考えてみたいと思います。 

まずは、過去に裁判になったパロディを見てみましょう。 

北海道名物の菓子「白い恋人」

(登録第1435156号) 

この白い恋人のパロディが、吉本興業の子会社が販売する菓子「おもしろい恋人」です。 

(出典:株式会社 サンタプラネットHP) 

スイスの高級時計「フランク・ミュラー」

(登録第4978655号)

このフランク・ミュラーのパロディが、大阪市の会社が製造販売する腕時計のブランド「フランク三浦」です。 

(登録第5517482号)

パロディ事件(雪山滑降写真のパロディ)

写真家が、スキーヤーが雪山の斜面を滑降している場景を撮影したカラー写真 

デザイナーが、この写真を利用して、周囲をトリミングするとともに、その上部に自動車タイヤの写真を配して映像を合成し、白黒写真に仕上げて発表しました。 

(出典:裁判所HP 事件番号 昭和51年(オ)第923号 別紙1) 
  1. パロディとは?
  2. 法的に問題があるのか?
  3. パロディに線引きはあるのか?

1.パロディとは? 

著作権法等においてパロディに関する明確な定義はありません。文化庁のパロディワーキングチームの報告書(平成25年3月 文化庁)では、辞書的な意味においてパロディとは、 

  • 既存の著名な作品を対象としていること
  • 文体や韻律を残しつつ内容を改めること
  • 滑稽・風刺化するもの

だと考えられるものであるが、国や地域の文化や社会の在り方に深く関わるため定義することは困難だ、としています。 

このワーキングチームではパロディの検討にあたってパロディを、 “既存の著作物を何らかの形で自己の著作物において利用しているもの” と捉えることにしています。 

2.法的に問題があるのか?

ここではどのような法律が根拠になり得るかを整理します。 

上に例示した面白い恋人やフランク三浦の例は、商標(商品名やマーク等)のパロディです。商標を保護する法律は商標法です。 

商品外観(デザイン)を対象としたパロディもあり得ます。デザインを保護する法律は意匠法です。 

上記文化庁パロディワーキングチームでは“(既存の)著作物”のパロディを対象としています。著作物を保護する法律は著作権法です。 

その他、不正競争防止法が挙げられますが、ここでは割愛します。 

いずれの法律においてもパロディを認める規定はありません。従って、パロディが法律の禁止する範囲内のものであるなら違法行為となります。 

3.パロディに線引きはあるのか? 

具体的な線引きはありませんが、それぞれの法律が禁止する範囲を整理します。 

商標法では類似する範囲(パロディの文字やマークが登録商標に類似し、かつ、パロディに係る商品やサービスが登録商標において指定されている商品、サービスと類似する範囲)(詳細は過去記事参照)まで無断使用が禁止されています。 

意匠法でも類似する範囲(パロディのデザインが登録意匠に類似し、パロディに係る物品が登録意匠の物品と類似する範囲)まで無断使用が禁止されています。 

著作権法では著作物と同一のものを複製することは禁止されています。引用(※)であれば例外的に無断使用が認められていますが、(同一性保持権と言われる権利に基づくと)著作者の意に反して著作物を変更、切除その他の改変をすることは禁止されています。 

また、著作物を元に二次的な著作物を作る場合は、翻案権(著作物の本質的な特徴を残して新たな著作物を創作する権利)や前記同様に同一性保持権の問題がありますので、原著作者の許諾を得ずにパロディ化すると著作権侵害になる可能性があります。結局、パロディ化する場合は原著作者の許諾を得るべきだと言えそうです。 

※「引用」については文化庁HP参照 著作物等の「例外的な無断利用」ができる場合 
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