パロディTシャツの商標権
企業ロゴのTシャツをパロディ化しても大丈夫?~商標権違反の事例~
商標法違反
以前、大阪の繁華街にあるパロディTシャツを販売している会社が、大阪府警の捜索を受けて、「商標法違反」の疑いで店長ら13人が逮捕されました。
(2016年10月26日各種報道より)
大きな繁華街や観光地を訪れたとき、スポーツブランドや知名度の高いロゴなどをパロディ化したTシャツがお土産と一緒に売られているのを見かけたことがありませんか?
今回、販売者が逮捕された大阪の事件では、いったい何が問題だったのでしょうか?
商標権の発生
商品やサービスに付ける「マーク」や「ネーミング」を財産として守るのが「商標権」という知的財産権です。企業ロゴやブランドロゴも有名なものはほとんどが特許庁で「商標権」の登録がされています。
詳しくは、<商標ってなに>を読んでみてください。
商標権の効力
商標登録により、所有者は独占的に登録商標を使用することができます。また、他人がその登録商標やその登録商標に類似する商標を無断使用できなくなります。
ここで、登録商標を使用できる商品・サービスの範囲、他人に無断使用させないことができる商品・サービスの範囲は無制限というわけではありません。商標登録にあたってはその商標を使用する商品・サービスを指定する必要があります(これを“指定商品”、“指定役務”と言います)。
商標権者が登録商標を使用できるのは指定した商品・サービスについてであり、他人に無断使用させないことができるのは指定した商品・サービスと指定した商品・サービスに類似する商品・サービスまでです(下の商標権の効力が及ぶ範囲に関する図参照)。

パロディ商標の法的問題
パロディ商標の場合には何が問題になるのでしょうか?
今回、パロディの対象となったadidasのオリジナルロゴですが、商品“被服”を指定して商標登録されています。

今回のパロディTシャツは、まず、登録商標の指定商品“被服”と商品が同一です。次に、商標そのものはパロディ化されているので完全に同一ではありませんが、登録商標と類似するものでした。
つまり、今回のパロディTシャツは登録商標と同一の商品であり、かつ、商標が類似するものでした。
従って、商標権の効力について前記した通り、今回のパロディTシャツには登録商標の効力が及ぶことになり(商標権侵害になり)、違法行為として認定されたと考えることができます。
なお、商標が類似するかどうかの検討要素として、
- 外観(商標の見た目)
- 称呼(商標の発音)
- 観念(商標から想起されるもの)
の3つが挙げられます。
また、取引の実情なども考慮する必要があります(詳細は割愛)。
商標権侵害の罰則
パロディに関する商標権侵害についてとても大事なことは、商標法違反行為には、大変厳しい罰則があるということです。
商標法第78条(侵害の罪)
商標権又は専用使用権を侵害した者(中略)は、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
会社ぐるみで商標権違反をした場合には、違反をした個人の刑事罰(上記)のほか、法人にも3億円以下の罰金という大変に厳しい罰則があります。